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不動産仲介業者が知っておくべき
今後の変化と新しい需要
はじめに
不動産仲介業は、他の業種と比べて新規参入しやすい業種といわれています。しかし、参入しやすいといっても成功が保証されているわけではありません。
不動産仲介業に参入して成功する確率を高めるには、不動産業界の今後の変化と新しい需要についての理解を深めておくことが必要不可欠です。
この記事では、不動産仲介業者が知っておくべき今後の変化と新しい需要を解説します。
不動産業界を左右する人口の動き
不動産業界は「衣」「食」「住」という、生活に欠かせない分野の1つである「住」を担っている重要な業種です。重要な業種であるという点から安定した需要が期待できる一方、人口が減少すれば不動産業界に対する需要も減少するため、人口推移の影響を受けやすい業界であるということを理解しておく必要があります。
また、不動産仲介業では拠点を決めて活動することになります。そのため、日本全体の人口推移だけでなく、各地域の人の流れ(流出・流入)を把握した上で活動する拠点を決めることも大切です。
まずは不動産業界を左右する人口の動きについて、詳しく見ていきましょう。
進む少子高齢化
現在の日本は、出生率の低下による「少子化」、平均寿命の伸びが重なって総人口に占める高齢者の割合が増える「高齢化」が同時に進行する少子高齢化社会となっています。
総務省の「国勢調査」「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年4月推計)」によると、2022年時点の人口は1億2,431万人ですが、約40年後の2065年には8,808万人になると予想されています。
2022年と2065年の総人口に占める各年齢層(19歳以下、20歳以上64歳以下、65歳以上)の人数と割合は、以下の通りです。
年齢層 | 2022年 | 2065年 |
---|---|---|
19歳以下 | 2,016万人(16%) | 1,237万人(14%) |
20歳以上64歳以下 | 6,768万人(54%) | 4,189万人(48%) |
65歳以上 | 3,648万人(29%) | 3,381万人(38%) |
不動産価格は、需要の供給のバランスによる影響を受けます。例えば、不動産需要が高いにもかかわらず供給が少ない場合には不動産価格が上昇、反対に供給が需要を上回っている場合には不動産価格が下落します。
少子高齢化の進行によって人口が減少すれば、不動産の需要が低下することになるため、今後は不動産価格が下落しやすい状況が続くと予想されるでしょう。
地方の過疎化と首都圏への流入
少子高齢化の影響で不動産価格が下落しやすい状況が予想されると記述しましたが、全ての地域で少子高齢化の影響を受けるわけではありません。
日本全体で見れば人口は減少していますが、地域によっては引っ越しや外国人の受け入れなどによって居住者が増加している地域も見られます。
例えば、首都圏(東京23区)や大阪市、名古屋市などの政令指定都市では、周辺の地域からの流入や外国人の受け入れなどによって人口が増加傾向にあります。これらの地域では、供給に対して需要が安定しているため、不動産価格が上昇または安定して推移しているケースが多いです。
一方、地方圏では都市部への人口流出による過疎化が進行しており、地価の大幅な下落が目立ちます。不動産業界での開業を検討している人には、ある程度の需要が期待できる都市部での開業をおすすめします。
不動産業界の今まで
不動産業界での開業を成功へと導くためには、不動産業界の現状や課題などを把握しておくことが大切です。今までの不動産業界のポイントをまとめると、以下の3つになります。
- 増え続ける空き家
- 新築住宅を作り続ける日本
- 賃貸より持ち家が多数派
それぞれのポイントについて、詳しく説明していきます。
増え続ける空き家
人口が増加傾向にある場合、いずれかのタイミングで自身の住居を確保することになるため、不動産の需要が高くなります。
しかし、昨今の日本は少子高齢化によって人口が減少傾向にあるため、不動産の需要が年々低下しているのが現状です。
その結果、適切に管理されていない空き家が年々増加しており、倒壊のリスク、害虫や害獣が住み着くことによる衛生上有害、景観を損なっているなどのトラブル(空き家問題)が発生しています。
周辺住民の生活環境の保全という観点から、2015年5月26日に制定された「空家等対策特別措置法」では、適切に管理されていない空き家に対して、自治体による勧告(勧告に従わない場合は固定資産税の優遇措置が適用されなくなる)、命令(命令に従わない場合は最大50万円以下の過料)などの罰則が科されています。
最終的には行政代執行で強制的に空き家を解体・更地にするといったように、増え続ける空き家は日本で深刻な問題となっており、不動産業界で開業する際はこの問題と向き合わなくてはなりません。
新築住宅を作り続ける日本
アメリカやフランス、イギリスなどの欧米諸国は中古住宅をリフォームやリノベーションして再利用するのが一般的です。しかし、日本は中古住宅の再利用に対する意識が高いとはいえません。
その背景には、「中古住宅は耐久性に問題がある」「購入するのであれば新築が良い」という購入者側の新築信仰に加えて、住宅を提供しているハウスメーカーやディベロッパーもリフォームやリノベーションと比べて売上の大きい新築を提案したいという両者の思惑のマッチングが関係しています。
人口が減少していて需要が減少しているなかでもマンションや分譲住宅の開発が進んでいるため、空き家問題は簡単に解決できる問題ではないと言えるでしょう。
賃貸より持ち家が多数派
住居を確保する方法は、賃貸と持ち家の大きく2つに分かれます。
賃貸には、自身のライフステージに合わせて住み替えが自由にできる、固定資産税を支払う必要がないなどのメリットがあります。一方、間取りや設備を自由に決めることができない、最終的に自分の資産として手元に残らない点がデメリットです。
持ち家には、最終的に自分の資産として手元に残る、住宅ローン完済後は住居費用の負担が少なくなるなどのメリットがあります。一方、容易に住み替えられない、住居費用を抑えられない(賃貸では賃料の安い物件に引っ越すことが可能)点がデメリットです。
このようにメリット・デメリットが異なるため、どちらが一概に良いとは言い切れません。しかし、市場では賃貸より持ち家が多数を占めています。
不動産開業を検討している人は、需要の大きい持ち家をターゲットとした戦略を練る方が良いでしょう。
不動産仲介業の市場については、別の記事で紹介しています。
詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
>>不動産仲介業の市場規模はどれくらい?今後の動向や課題について解説
不動産仲介業の今後~社会構造の変化により新たに生まれる需要~
不動産仲介業では、不動産の売買を仲介することによって得られる仲介手数料が主な収入源です。そのため、少子高齢化による人口減少は需要にも影響するため、不動産仲介業での開業を検討している人は、社会構造の変化に合わせた戦略を練っていくことが求められます。
続いて、社会構造の変化によって新たに生まれる需要について詳しく解説していきます。
今後は単独世帯を含めた少人数世帯が約7割に
少子高齢化によって人口が減少している一方で、世帯数は増加傾向にあります。少子化の背景には、出生率の低下だけでなく、生涯未婚率の上昇も挙げられます。また、離婚率も上昇しており、これら全てが単独世帯を増加させる要因となっているためです。
また、今まで二世帯が1つの住居に暮らすことも珍しくありませんでしたが、以下のように昨今は夫婦のみ、ひとり親と子の世帯も増加し、将来的にはこのような少人数の世帯が全体の7割を占めるといわれています。
構成 | 2015年の比率 | 2040年の比率 |
---|---|---|
単独世帯 | 34.5% | 39.3% |
夫婦のみ | 20.2% | 21.1% |
ひとり親と子 | 8.9% | 9.7% |
夫婦と子 | 26.9% | 23.3% |
その他(二世帯など) | 9.5% | 6.6% |
参照:国立社会保障・人口問題研究所
また、65歳以上男性の独居率が14.0%から20.8%、女性は21.8%から24.5%、75歳以上の男性は12.8%から18.4%(女性は26%で変動なし)と2040年には現在の社会構造と大きく変化しているため、変化に合わせた戦略が求められます。
少人数世帯のための住宅需要
不動産取引は世帯単位で行われるものであるため、人口が減少しても世帯が増加しているのであれば安定した需要が期待できます。
しかし、安定した需要が期待できるといっても、少人数世帯が持ち家を取得することはほとんどありません。世帯構成にあった間取りを見つけやすい賃貸物件を選択するのが一般的です。
そのため、今まで持ち家をターゲットとした戦略が中心でしたが、これからは少人数世帯のための住宅需要を考慮していく必要があるでしょう。
持ち家志向の低下と増える賃貸需要
少人数世帯の増加によって持ち家志向が低下しており、賃貸需要が増加傾向にあります。賃貸需要が増加する背景には、他にも以下のような理由が挙げられます。
- 多額の住宅ローンを抱えたくない
- 家族の状況の変化(転勤、独立、進学など)に合わせて自由に住み替えたい
- 固定資産税や相続税などを気にせずに済む
- 資産価値として期待できない
不動産仲介業としては、今後は居住用不動産の売買は少なくなる可能性がある一方で、賃貸用不動産の売買が活発になる可能性があります。経営を安定させるためにも、住宅需要の変化を常に意識しながら適切な戦略を立てていきましょう。
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居住用不動産の売買と比べると賃貸用不動産の売買は金額も大きいため、あまり活発ではありません。そのため、社会構造の変化に合わせて他の戦略も取り入れていくことが大切です。
そこで注目されているのが、「小規模不動産特定共同事業」です。小規模不動産特定共同事業とは、投資家から出資を受けて賃貸経営を行い、その収益を分配することです。
物件を仕入れる際や仕入れた物件をリフォーム・リノベーションする際に資金が必要ですが、投資家の出資金を充てられるので、不動産会社はほとんどリスクを伴いません。事業を開始した後は、管理手数料という名目で安定収入が得られます。
しかし、小規模不動産特定共同事業を開始するには、専門的な知識が求められます。不動産フランチャイズに加盟することで、ブランド力を活かして営業力を高められる、ノウハウを享受できるため、社会構造の変化に合わせた戦略を練ることが可能です。
「不動産業界の未経験者」「不動産仲介業を開始するにあたり経営を軌道に乗せられるか不安」という人は、不動産フランチャイズへの加盟を検討してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
不動産業界は、大手が独占しておらず広く開かれており、日常生活に欠かせない「住」を担っている業界であるため安定した需要が期待できます。そのため、他の業種と比べると新規参入しやすい業種と言われています。
だからといって、成功が保証されているわけではありません。経営を安定化させるためには、不動産業界が影響を受けやすい人口推移や各地域の人の流れ(流出・流入)を把握しておくことが大切です。
特に、昨今は少子高齢化によって社会構造が変化しており、需要が以前とは異なっています。持ち家から賃貸に需要が移行しつつあるため、持ち家需要だけでなく賃貸需要を考慮した戦略を練らなくてはなりません。
不動産仲介業に新規参入して安定した利益を得るためにも、社会構造の変化を常に意識しながら適切な戦略を取り入れていきましょう。