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複雑な実家売却の手順を解説。
必要な費用や税金、相続についても説明します
はじめに
不動産の売却相談を受けている街の不動産屋や実家の売却を悩んでいる方の中には、どのように実家の売却を進めればよいか分からない方も多いことでしょう。一般的な不動産売却とは異なり、実家の売却は手順や費用が異なる場合があるので、注意が必要です。
この記事では、実家の売却前にすること、実家売却に必要な準備、実家売却の手順などについて解説します。不動産売却の相談を受けている街の不動産屋や実家の売却に悩む方は、ぜひご参照ください。
実家の売却を考える方が増えている
ベビーブームの世代である団塊の世代が高齢化を迎え、少子高齢化が深刻化しています。高齢化問題は、人口に占める高齢者の割合が増加するだけではありません。
近年、親の高齢化で実家を相続する方が増えており、相続したもののどうすればよいか分からず、空き家のまま放置されるケースが増えています。相続した空き家をそのまま放置しても、維持管理に手間と費用がかかるため、売却を検討する方も多いです。
適切な管理が実施されずに放置される空き家問題も深刻化しており、高齢化問題と空き家問題の解決が昨今の課題となっています。
「空き家」に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>市場規模は9兆円?空き家活用ビジネスの基本と成功事例をご紹介
実家売却の前にすること
実家の売却は、自身を不動産の名義人とする一般的な不動産売却とは異なります。そのため、トラブルを未然に防ぎながら速やかに不動産を売却するためには、実家売却前に何をする必要があるのかを把握しておくことが大切です。
実家売却前にすることとして、以下の2つが挙げられます。なお、今回は誰も家に住む予定がなく、不動産を売却する際に必要なことを紹介します。
- 遺言書を確認する
- 相続の手続き
遺言書を確認する
遺言書とは、被相続人(亡くなった方)が遺産分割の方法を生前に明記した書類です。遺言書を発見しても、勝手に開封してはいけません。
自筆証書遺言という被相続人が自分で作成した遺言書の場合には、家庭裁判所による検認手続きが必要です。検認手続きを行わずに相続人が勝手に開封した場合は、遺言書が無効になるので注意してください。公正証書遺言という公証人と公証役場で作成した遺言書の場合には、検認手続きは必要ありません。
遺言書がある場合とない場合の違いを見ていきましょう。
遺言書がある場合
遺言書がある場合は、原則、遺言書の内容に従って遺産分割を行います。具体的な内容が指示されていない場合は、書いてある部分のみ遺言書に従い、残りは相続人同士で話し合って決めます。
遺言書がない場合
遺言書が作成されていない場合は、民法に定められている法定相続人が相続人になります。法定相続人には相続順位が決まっています。相続順位は、以下の通りです。
相続順位 | 相続人 |
---|---|
常に相続人になる | 配偶者 |
第一順位 | 被相続人の子 |
第二順位 | 被相続人の親 |
第三順位 | 被相続人の兄弟姉妹 |
第一順位者がいる場合には、第二順位者は相続人になれません。第二順位者は、第一順位者がいない場合のみ相続人になれます。第三順位者は、第一順位者と第二順位者がいない場合のみです。
相続人が決まった後は、相続人同士で遺産分割方法について話し合う遺産分割協議を行います。
遺産分割協議について
遺産分割協議とは、相続人同士で遺産の分割方法を話し合うことです。対面で話し合う必要はありませんが、相続人全員で話し合い合意に至らなくてはなりません。
遺産分割協議で相続方法が決まった後、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書とは、遺産分割協議の内容をまとめた書類です。相続人全員の署名・押印、印鑑証明書が必要です。
相続の手続き
相続の手続きとは、名義変更手続きのことです。名義が被相続人のままになっている不動産を相続人が勝手に売却することはできません。
売却する場合は、名義変更手続きが必要です。名義変更手続きについては次の見出しで詳しく説明します。
実家売却の準備をする
実家売却前の下準備が完了した後は、いよいよ実家売却に向けた準備に進みます。実家売却に進む前に必要な準備には、以下の3つが挙げられます。
- 名義変更・相続登記
- 実家の片付け
- 税金の対策
名義変更・相続登記
先述の通り、名義が被相続人のままになっている不動産を相続人が勝手に売却することはできません。売却を進めるためには、名義を相続人に変更する必要があります。
実家の名義を変更する際は、不動産を管轄する法務局に行って所有権移転登記を行います。所有権移転登記には遺産分割協議書が必要になるほか、登録免許税という税金を納めなくてはなりません。必要書類の数は多く、準備に時間がかかるため、どのような書類が必要なのかを調べて早めに用意しましょう。
実家の片付け
相続した実家は、被相続人の遺品が残ったままになっています。遺品が残ったままでは不動産売却を速やかに行うことができないため、売却前に実家の片付けを行わなくてはなりません。
実家が遠方にある場合、自分で片付けるのは困難です。遺品整理業者に依頼すれば時間と手間を省けますが、数十万円の費用を支払わなくてはなりません。費用と手間を比較しながら総合的に判断しましょう。
仏壇の対処
実家に仏壇がある場合には、仏壇を引っ越さなくてはなりません。仏壇を引っ越す際は、魂抜きや開眼法要、魂入れなどの供養が必要になるほか、特殊な運搬や手続きが必要です。
宗派によって仏壇の対処が異なるので、事前に確認してから取り掛かりましょう。
税金の対策
実家を売却して譲渡所得という利益が発生した場合、譲渡所得税という税金が課されます。譲渡所得の有無を計算する際は、売却代金から購入代金やかかった費用などを差し引きますが、購入代金が分からないケースも多いです。
購入代金が分からないケースでは、譲渡所得×5%を取得費として計算するため、実際の取得費と比べて大幅に安くなります。譲渡所得が多くなることで課される税金が増えるため、税負担を少しでも軽減するためにも、売買契約書といった購入時の価格が分かる契約書類を探しておきましょう。
実家売却の手順
実家の名義を被相続人から相続人に変更した後は、ついに実家の売却です。少しでも高く・速やかに売却するには、実家の売却手順を理解してから売却に進むことが大切です。実家の売却手順は、以下の通りです。
- 1.査定の依頼をする
- 2.媒介契約を結ぶ
- 3.販売活動の開始
- 4.内覧の対応
- 5.売却価格・条件の決定
- 6.売買契約と引き渡し
査定の依頼をする
実家を売却する際にどのくらいの価値があるのか把握し、いくらで売り出すのか決めるために、不動産会社に査定を依頼します。
不動産会社に査定を依頼する際は、複数の不動産会社に依頼することをおすすめします。その理由は、不動産会社ごとに査定で重視するポイントが異なるためです。複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果を比較検討しながら適正な売出価格を見極めましょう。
不動産会社の選び方
複数の不動産会社に査定を依頼した後は、仲介を依頼する不動産会社を決定します。不動産会社を選ぶ際は、査定結果の高い不動産会社を選びがちですが、査定結果通りに売れると保証されているわけではありません。
実際に現地確認を行わない過去の取引実績や市場相場などから査定を行う机上査定の場合、提示された結果は精度があまり高くはないため、参考程度に留めておく必要があります。
不動産会社の取引実績や担当者との相性などを踏まえながら、信頼できる不動産会社を選びましょう。
媒介契約を結ぶ
媒介契約とは、不動産会社に不動産の売却の仲介を依頼する契約です。媒介契約は以下の3つがあり、特徴が大きく異なるので、違いを理解しておく必要があります。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約の特徴は、以下の通りです。
- 契約の有効期間:3ヶ月以内
- 自分で見つけた買主との契約:不可
- 複数社との契約:不可
- 不動産流通機構(レインズ)への登録:契約から5日以内
- 販売状況の報告:7日に1回以上
自分で見つけた買主との直接契約が禁止されており、必ず不動産会社を仲介して契約しなくてはなりません。レインズに登録することによって広く不動産情報が知れ渡るので、成約する可能性が高まります。レインズへの登録期間が短く、販売状況の報告の頻度も高いので、充実した売却サポートが期待できます。
専任媒介契約
専任媒介契約の特徴は、以下の通りです。
- 契約の有効期間:3ヶ月以内
- 自分で見つけた買主との契約:可能
- 複数社との契約:不可
- 不動産流通機構(レインズ)への登録:契約から7日以内
- 販売状況の報告:14日に1回以上
専属専任媒介契約と比べてレインズへの登録期間が長く、販売状況の報告の頻度は少なくなります。しかし、自分で発見した相手との直接契約が認められているので、無駄な支出を抑えられる点がメリットです。
一般媒介契約
一般媒介契約の特徴は、以下の通りです。
- 契約の有効期間:規定なし※基本的に3ヶ月以内
- 自分で見つけた買主との契約:可能
- 複数社との契約:可能
- 不動産流通機構(レインズ)への登録:登録義務なし
- 販売状況の報告:規定なし
一般媒介契約は、制約の少ない契約形態です。複数社に依頼できるものの、仲介手数料を獲得できるのは成約に至った不動産会社だけなので、売却活動に積極的になりにくいです。
媒介方法を選べる場合は、充実しサポートが期待できる専任媒介契約か専属専任媒介契約がよいでしょう。
販売活動の開始
不動産会社と媒介契約を締結した後は、販売活動に取り掛かります。不動産会社は、不動産ポータルサイトやレインズなどへ物件情報を登録します。基本的には不動産会社が中心となって販売活動を進めるので、売主は特に何も行うことはありません。
ただし、購入希望者が現れた場合は、現地確認(内覧)へと移行するため、いつでも内覧に対応できるように部屋を片付けておきましょう。
内覧の対応
内覧とは、購入希望者による現地確認です。内覧の印象が成約に大きく影響します。特に、水回りがきれいかをチェックする方は多いです。
ハウスクリーニングを依頼すれば、専門業者が専用機材や専用薬剤を使用して部屋をきれいにしてくれます。費用はかかりますが、水回りだけでも依頼すると印象がアップするでしょう。
売却価格・条件の決定
内覧後の購入希望者が購入に前向きだった場合、売却価格や条件交渉に移ります。必ず売出価格通りに成約に至るわけではなく、値下げ交渉が行われることが多いです。
多少の値下げ交渉の場合は、次にいつ購入希望者が現れるか分からないほか、内覧を複数回行う手間を考えると、交渉に応じるのも選択肢の1つといえるでしょう。
売買契約と引き渡し
売却価格と条件が決定して双方が合意に至った後は、売買契約の締結と引き渡しに移ります。売買契約の日に不動産会社の担当者によって重要事項説明が行われ、最後に買主と売主が契約書への記名・押印を行います。
売買契約締結後は、契約書に記載された引き渡し日に残金の決済と物件の引き渡しを行うことで、実家の売却は完了です。
実家売却にかかる費用と税金
実家の売却で得られた売却代金は、全てを自由に使えるわけでありません。売却代金から売却にかかった費用や税金などを差し引かなくてはならないため、手元にお金を残しておく必要があります。
資金不足で費用や税金を支払うことができないといったことがないように、実家の売却でかかる費用と税金を把握しておきましょう。
売却にかかる「費用」
実家の売却にかかる費用は、状況によって違ってくるため一概には言い切れませんが、おおよそ売却代金の5%といわれています。実家の売却にかかる主な費用には、以下の2つが挙げられます。
- 仲介手数料
- 司法書士の手数料
仲介手数料
仲介手数料とは、媒介契約を締結して成約に至った不動産会社に対して支払う報酬です。仲介手数料の上限は宅地建物取引業法に定められています。仲介手数料の上限は売却価格によって、以下のように異なります。
- 200万円以下:売却価格の5%+消費税
- 200万円超400万円以下:売却価格の4%+2万円+消費税
- 400万円超:売却価格の3%+6万円+消費税
司法書士の手数料
実家の名義変更や引き渡しの際の所有権移転登記を自分で行うことには、手間と時間がかかります。そのため、登記の専門家である司法書士に依頼するケースが多いです。
司法書士に依頼した場合は、報酬を支払わなくてはなりません。登記手続きにかかる費用は司法書士や依頼の内容などで異なりますが、3~15万円程度を想定しておきましょう。
売却にかかる「税金」
実家の売却にかかる主な税金として、以下の4つが挙げられます。
- 相続税
- 登録免許税
- 譲渡所得税
- 印紙税
相続税
相続税とは、相続した遺産の金額が基礎控除を超える際に課される税金です。基礎控除の金額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で算出できます。
例えば、法定相続人の数が3人の場合には基礎控除は4,800万円とります。そのため、相続した遺産の金額が4,800万円以内であれば、相続税は課されません。
登録免許税
登録免許税とは、法務局で登記手続きを行う際に課される税金です。相続における名義変更の登録免許税は、不動産の固定資産税評価額の0.4%となっています。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却して利益が発生した場合に課される税金です。譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間が5年以下(短期譲渡所得)の場合と5年超(長期譲渡所得)の場合で以下のように異なります。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
所得税※ | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
※令和19年までは所得税に東日本大震災における被災者支援を目的とした復興特別所得税が上乗せ
印紙税
印紙税とは、経済取引において作成される文書に対して課される税金です。実家の売却の場合、売買契約書に印紙税が課されます。印紙税の税額は、以下のように契約金額によって異なります。
- 100万円超500万円以下:1,000円
- 500万円超1,000万円以下:5,000円
- 1,000万円超5,000万円以下:1万円
- 5,000万円超1億円以下:3万円
- 1億円超5億円以下:6万円
※平成26年4月1日~令和6年3月31日までに作成されるものは上記の軽減税額が適用
実家を売却する際の注意点
実家を売却する際は、トラブルを未然に防ぐためにも、以下の注意点を事前に把握した上で売却に進むことが大切です。
- 不動産は劣化が進むと売りづらい
- 業者選びは重要
不動産は劣化が進むと売りづらい
築年数が経過した古い家ほど、買い手を見つけることが容易ではありません。そのため、実家を空き家のまま放置しても、劣化が進んでさらに売りづらくなるだけなので、速やかに売却することが大切です。
そうすることで、好条件での売却が期待できるほか、固定資産税や都市計画税、管理費や修繕費などの無駄な支出を回避できるでしょう。
業者選びは重要
「実家売却の手順」や「不動産会社の選び方」の見出しで少し触れましたが、不動産会社によって売却結果は大きく異なります。そのため、業者選びはしっかり行うことが重要です。
例えば、大手だと安心と考えている方も多いかもしれませんが、大手は営業力の高さが魅力ではあるものの、数多く抱える案件に埋もれて周知されにくい可能性があります。
営業力の高さでは大手に劣る一方、地域密着型の近隣状況をよく把握している地元の不動産会社を選ぶほうがよい場合もあるので、不動産会社ごとの特性をしっかり比較してから依頼しましょう。
実家が上手く売却できない時は…
実家を売りに出してみたものの、買い手が見つからない場合の対処法として、以下の3つが挙げられます。
- 買取業者の利用
- 空き家バンクに登録
- 実家を売却せず、別の用途で活用する
買取業者の利用
買取業者とは、不動産を買い取って転売することを目的としている業者です。買取業者の場合、双方が条件に合意すればすぐに契約が成立するので、速やかに実家を現金化できます。
しかし、買取業者は転売を目的としているので、利益を出すために市場相場と比較して買取価格が2~3割程度低い点に注意が必要です。
空き家バンクに登録
空き家バンクとは、各自治体が運営するサービスです。空き家バンクに登録することで、空き家を探している買主に周知されやすくなります。
ただし、自治体は売買で発生したトラブルについては、一切関与してくれないという点に注意が必要です。
実家を売却せず、別の用途で活用する
色々工夫してみたものの、なかなか買い手が見つからない場合は売却を中断して、別の用途で活用することを検討するのも選択肢の1つです。例えば、賃貸物件として貸し出して家賃収入を得る、トランクルームとして利用するなどの活用方法が考えられます。
「空き家」に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>市場規模は9兆円?空き家活用ビジネスの基本と成功事例をご紹介
今後の不動産仲介市場は「相続」がポイントに
高齢化問題が深刻化する日本では、相続した実家の扱いに悩む相続人が増え、不動産会社に相談するケースが増えることが予想されます。
不動産仲介業者が相続や空き家に関する知識を身につければ、地域の相談先としての地位を確立でき、売却の受注につなげることによる業績アップへとつながります。
実家の相続は近年の集客のトレンドにもなっているため、相続や空き家に関する知識を身につけてチャンスを活かしましょう。
LIXIL不動産ショップでは相続ビジネスセミナーを開催中
LIXIL不動産ショップでは「相続サロン」というブランドを展開し、消費者と専門家の橋渡しを新たな不動産案件の獲得につなげるビジネスモデルを構築しています。
また、不動産経営者様のためのセミナーを、Webや全国各地で開催しており、収益拡大の方法や、「相続ビジネス」に関する内容も学べます。
セミナーについては、こちらを詳しくご覧ください。
https://fc.era-japan.com/seminar-info/
まとめ
現在の日本は、少子高齢化による高齢者問題や空き家問題が深刻化しています。実家を相続したものの、扱いに困っている相続人も増えており、不動産会社に相談に訪れる機会も増えています。
相続人の相談に対し、返答できなかった場合、せっかくのチャンスを活かせません。今後増える実家の相続を業績アップにつなげるためにも、相続や空き家に関する知識をしっかり身につけましょう。