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もし不動産を相続したら。
売却までの流れや税金、節税について詳しく解説
はじめに
親から相続した不動産の売却について相談を受けている街の不動産屋の中には、相続の相談にどのように答えるべきか分からず、悩んでいる方もいることでしょう。相続の相談は今後も増えることが予想されるため、ビジネスチャンス獲得のためにも、相続に関する知識を身につけることはとても大切です。
この記事では、不動産の相続と売却までの流れ、売却時にかかる税金などに解説します。不動産相続に関する知識を身につけたい不動産屋は、ぜひご参照ください。
拡大する不動産の相続
日本は、少子高齢化で人口に占める高齢者の割合が年々増えています。特に、ベビーブームのあった団塊の世代の高齢化、つまり親世代の高齢化が進行しており、自分がかつて住んでいた戸建てやマンションなどを相続するケースが増えました。
しかし、相続した不動産に居住する相続人は少なく、相続後の利用に悩む相続人も増加しています。結果的に不動産の相続の増加は、昨今問題視されている空き家問題の深刻化の要因になっているのが現状です。
「空き家」に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>市場規模は9兆円?空き家活用ビジネスの基本と成功事例をご紹介
不動産の相続と売却までの流れ
トラブルを回避しながら不動産の相続をスムーズに進めるためには、不動産の相続と売却までの流れを事前に把握しておくことが大切です。
不動産の相続と売却までの流れを詳しく見ていきましょう。
相続人を確認し、必要に応じて遺産分割協議を行う
相続が発生した場合は、まずは遺言書の有無を確認します。遺言書とは、被相続人(亡くなった方)が生前に作成した遺産分割の方法についてまとめた書類です。遺言書がある場合は、原則遺言書の内容に従って相続を進めるため、遺言書の有無を必ず確認しておきましょう。
遺言書が作成されていなかった場合、民法に記載されている法定相続人の順位に基づいて相続人を確定させ、遺産分割について話し合う遺産分割協議を行います。
相続人が複数人いる場合、不動産は分割が容易ではない遺産なので遺産分割協議が難航しやすいです。分割の手段は複数ありますが、不動産を売却して現金化してから分割する換価分割が近年は多く用いられています。換価分割の方法の詳細は後述します。
遺言書の確認や相続人の決定、遺産分割協議に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
>>マンション相続の4つの方法。必要な費用や税金の事についても解説します
不動産を単独で相続する場合
相続人が複数人いるものの、不動産を相続人のうち1人が相続するのは単独で相続するケースに該当します。不動産を単独で相続する場合には、以下の流れで相続および売却を進めます。
- 1.遺産分割協議をする
- 2.相続登記を行う
- 3.相続不動産の売却を行う
1. 遺産分割協議をする
相続人が複数人いる場合、勝手に不動産を単独で相続することはできません。単独で相続するためには、他の相続人の同意が必要なので、遺産分割協議で話し合う必要があります。
遺産分割協議で単独で相続することが認められた場合には、遺産分割協議の内容をまとめた遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書の作成には、相続人全員の署名・押印、印鑑証明書が必要です。
2. 相続登記を行う
相続登記とは、不動産の名義を被相続人から不動産を相続する相続人に変更することです。管轄する法務局を訪れて手続きを行います。
相続登記の手続きには、遺産分割協議書が必要になるほか、登録免許税という相続登記にかかる税金を支払う必要があります。
3. 相続不動産の売却を行う
登記が完了して名義が相続人に切り替わってからは、相続人が単独で自由に不動産を売却できます。不動産の売却の手順は一般的な不動産の売却と同様です。
複数の不動産会社に査定を依頼し、査定結果や不動産会社の実績、担当者との相性などを踏まえながら仲介を依頼する不動産会社を決定して売却活動に臨みます。
不動産を換価分割で相続する場合
相続人が複数人で、不動産を売却して現金化してから相続するのは換価分割で相続するケースに該当します。不動産を換価分割で相続する場合には、以下の流れで相続および売却を進めます。
- 1.遺産分割協議をする
- 2.一旦、代表者で相続登記
- 3.相続不動産の売却を行う
- 4.現金を分割
1. 遺産分割協議をする
換価分割で相続する場合には、単独で換価分割を選択することはできないので、遺産分割協議を行って相続人全員の同意を得なくてはなりません。
遺産分割協議では、換価分割を選択することへの同意だけでなく、売却をスムーズに進めるために売却手順の同意を得ておきましょう。例えば、相続人の代表者1人の単独名義に変更し、売却完了後に相続割合に応じて売却代金を分割するという流れです。
単独で相続する場合と同様、遺産分割協議の内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員の署名・押印を行う必要があります。
2. 一旦、代表者で相続登記
不動産の名義が被相続人のままでは不動産を売却できないため、不動産の名義を変更します。
不動産の名義は相続人全員の共有名義とすることも可能ですが、相続登記の手続きに手間がかかるほか、不動産の売却時にも手間がかかるため、相続人の代表者1人の単独名義にすることをおすすめします。
3. 相続不動産の売却を行う
相続不動産を売却して現金化します。しかし、不動産の売却価格は、相続登記をした相続人の代表者が単独で決めてはいけません。
その理由は、売却価格が原因で、他の相続人とトラブルに発展する可能性があるためです。トラブルを未然に防ぐためにも、相続人全員で売却価格について話し合ってから売却を進めましょう。
4. 現金を分割
不動産の売却が完了して売却代金を受け取った後は、遺産分割協議で話し合った割合に基づいて、売却代金を各相続人に分けます。これで遺産分割は完了です。
相続した不動産の売却時にかかる3つの税金
相続した不動産を売却する際は、以下の3つの税金が課されます。
- 登録免許税
- 印紙税
- 譲渡所得税
上記のうち、登録免許税と印紙税は必ず課される税金ですが、譲渡所得税は売却によって利益が出た場合のみ課される税金であるという点に注意してください。
1.登録免許税
登録免許税とは、相続登記を行う際にかかる税金です。税率は以下の通りです。
不動産の価額×0.4%
例えば、不動産の価額が4,000万円だった場合は「4,000万円×0.4%=16万円」の登録免許税がかかります。
2.印紙税
印紙税とは、経済取引で作成する文書に対して課される税金です。印紙税は、売買契約を締結する際における売買契約書に貼付して納めます。印紙税の税額は、以下のように契約金額によって異なります。
契約金額 | 印紙税額 | 軽減税額※ |
---|---|---|
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※平成26年4月1日~令和6年3月31日までに作成されるものは軽減税額が適用
参照:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
3.譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合に課される税金です。そのため、売却で利益が出なければ課されません。譲渡所得は、以下の計算式で算出します。
計算式1:譲渡所得税=税率×譲渡所得
計算式2:譲渡所得=売却価額-(取得費※1+譲渡費用※2)
※1取得費=購入代金や購入時の仲介手数料、登記費用などの合計額
※2譲渡費用=仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要した費用
譲渡所得税の税率は、不動産の所有期間が5年以下の場合(短期譲渡所得)と5年超の場合(長期譲渡所得)で以下のように異なります。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
所得税※ | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
※令和19年までは所得税に東日本大震災における被災者支援を目的とした復興特別所得税が上乗せ
相続した不動産を売却する際の節税対策
通常、不動産を売却して利益が発生した場合には譲渡所得税が課されますが、控除を利用することで税負担を軽減できます。また、特例を利用することによって相続税の負担を軽減することも可能です。
不動産の相続で利用できる控除や特例について、詳しく見ていきましょう。
相続した空き家を売却したときの3,000万円控除
相続した空き家を売却したときの3,000万円控除とは、相続した空き家を売却し、一定要件を満たした場合は譲渡所得を算出する際に3,000万円が控除されるというものです。計算式は以下の通りです。
売却価額-(取得費+譲渡費用)-3,000万円控除=譲渡所得
3,000万円の特別控除を利用した場合、売却価額から取得費と譲渡費用を引いた価格が3,000万円以下であれば譲渡所得税が課されません。しかし、この控除は以下のような一定の要件を満たさないと利用できません。
- 昭和56年5月31日以前に建築された
- 区分所有建物登記がされている建物でない
- 相続開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいない
参照:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
マイホームを売却したときの3,000万円控除
マイホームを売却したときの3,000万円控除とは、自身が居住する不動産を売却する際に一定要件を満たせば譲渡所得を算出する際に3,000万円が控除されるというものです。計算式は以下の通りです。
売却価額-(取得費+譲渡費用)-3,000万円控除=譲渡所得
3,000万円の特別控除を利用した場合、売却価額から取得費と譲渡費用を引いた価格が3,000万円以下であれば譲渡所得税が課されません。
控除の内容は、相続した空き家を売却したときの3,000万円控除とほぼ同じです。相続した不動産を自宅として使用していた場合は、相続した空き家を売却したときの3,000万円控除ではなく、この特例を適用できます。
3年以内の売却で得られる取得費加算の特例
3年以内の売却で得られる取得費加算の特例とは、不動産を相続した場合に、相続税の申告期限から3年以内に売却する(不動産の相続から3年10ヶ月以内)ことで、取得費に売却した不動産に対して課された相続税額を加算できる特例です。計算式は以下の通りです。
売却価額-(取得費+相続税額+譲渡費用)-3,000万円控除=譲渡所得
取得費に相続税額を上乗せできるので、実質的には譲渡所得税の負担を軽減できます。ただし、マイホームを売却したときの3,000万円控除との併用はできるものの、相続した空き家を売却したときの3,000万円控除と併用はできないので注意が必要です。
相続不動産の3年以内の売却は、節税以外のメリットも
相続不動産を3年以内に売却した場合、取得費加算の特例を利用できるというメリットがありましたが、他に以下のメリットが挙げられます。
- 築年数が経たないうちに換金できる
- 固定資産税など、負担を減らすことができる
築年数が経たないうちに換金できる
不動産は、築年数の経過とともに建物の資産価値が下がります。戸建て住宅の場合は、築10年で価値は購入時の5割、築15年で2割、築20年で0になるといわれています。
相続後に放置していても、基本的に資産価値が上がることはありません。そのため、使う予定がない場合には早期に売却したほうがよいでしょう。
固定資産税など、負担を減らすことができる
空き家のまま放置していても、不動産の所有者に対して課される固定資産税や都市計画税は毎年かかります。また、適切な管理が行われていない空き家は特定空き家に指定されて、固定資産税や都市計画税の優遇措置が受けられなくなる可能性があり、回避するためには管理費や維持費がかかります。
問題点は、維持コストだけではありません。築年数の経過した空き家は、災害による倒壊の危険性も高いため、早期に手放したほうが安心できるでしょう。
相続した不動産の売却で利益が出たら、確定申告が必要
相続した不動産を売却し、譲渡所得が発生した場合は税金を納めなくてはならないので確定申告が必要です。しかし、確定申告が必要なのはあくまでも譲渡所得が発生した場合のみです。譲渡所得が発生したかどうかは譲渡所得税の見出しで触れた以下の計算式で確認できます。
計算式:譲渡所得=売却価額-(取得費+譲渡費用)
確定申告の可否を決める金額は、特例・控除の適用前
譲渡所得が発生していない場合には、確定申告が不要です。しかし、注意しなければならないのが、どの時点で譲渡所得が発生していないかです。
確定申告が不要なのは、特例・控除を適用する前の譲渡所得がマイナスのケースです。特例・控除を適用して譲渡所得がプラスからマイナスに変わるケースでは、確定申告が必要なので注意しましょう。
確定申告を行うタイミングは、売却した翌年に
確定申告は不動産を売却してすぐに行うわけではありません。翌年の2月16日~3月15日までに確定申告を行う必要があることを覚えておきましょう。
相続した不動産の売却はできるだけ早く、ただし慎重に
相続した不動産を売却する際には、少しでも税負担を軽減するためにも控除や特例をうまく利用しましょう。相続から3年以内を目途に売却することで、控除や特例をうまく利用できるほか、維持コストを抑えることも可能です。
しかし、3年以内を目途にするといっても焦ってはいけません。相続人同士でトラブルに発展する、売り急いで安値で売却しては意味がないからです。相続した不動産を売却する際は、慎重に行いましょう。
不動産仲介市場は「相続」が重要になる
今後、少子高齢化の深刻化が予想される日本では、不動産仲介業者に不動産相続に関する相談を持ち掛ける方が増えると考えられます。その際に、不動産仲介業者が対応できない状況では、せっかくのビジネスチャンスを逃すことになりかねません。
不動産仲介業者が不動産相続に関する知識を身につけることにより、地域の相談先という地位を確立できれば、相続した不動産の売却案件の受注につながります。業績拡大のためにも、不動産相続に関する知識をしっかり身につけましょう。
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まとめ
高齢化が進行する日本では、不動産を相続する機会が増えており、相続した不動産の扱いについて不動産仲介業者に相談するケースが増えています。
一般的な不動産売却と相続した不動産の売却は流れが違うため、相談者の質問に答えるには不動産の相続から売却までの流れをしっかり把握することが大切です。
しかし、相続に関する知識を身につけることはそう簡単ではありません。効率よく知識を身につける、時代の変化に合わせて業績拡大を目指すには、フランチャイズに加盟するのも選択肢の1つといえるでしょう。