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増加する小規模M&A。
その流れや成功のコツ、注意点を解説
はじめに
不動産業を営んでいる方の中には、後継者不足によって事業を継続することが難しく、M&Aによる事業承継を検討している方もいるのではないでしょうか。M&Aには専門知識が必要なので、正しい知識を身につけてから取り組むことが大切です。
この記事では、小規模M&Aとは何か、小規模M&Aの種類や流れ、注意点などを解説します。M&Aについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
小規模M&Aとは
M&Aと聞くと、規模が大きなものを想像する方も多いのではないでしょうか。M&Aには、小規模M&Aという中小企業や個人投資家などが利用する規模の小さなM&Aも存在します。
小規模M&Aには、明確な定義がありません。しかし、小規模M&Aを利用する方のほとんどは、年間の売上高が1億円規模の会社です。また、年間の売上高が1,000万円未満のマイクロM&Aという方法もあります。
近年増加している小規模M&A
近年小規模M&Aを利用する方が増えています。その理由として、以下の3つが挙げられます。
- 経営者の高齢化と後継者不足
- M&Aマッチングサイトの普及
- 個人の買い手の増加
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
経営者の高齢化と後継者不足
中小企業庁が発表した、2022年版小規模企業白書の年代別に見た中小企業の経営者年齢の分布では、年齢の多い層が60~64歳、65~69歳、70~74歳に分布しており、経営者の高齢化が進行していることが分かります。
参照:中小企業庁「第7節 経営資源の有効活用」
従来であれば、定年を迎える際に後継者に譲ることで経営者の年齢が若くなるはずですが、後継者不足で事業を譲ることができないため、小規模M&Aの需要が増えていると予想されます。
M&Aマッチングサイトの普及
M&Aマッチングサイトとは、事業の売り手と買い手をマッチさせることを目的としたサイトです。M&Aでは売り手と買い手の代理人が交渉するケースが多いですが、手間と費用がかかります。そのため、費用対効果を考えると非効率的なので、小規模M&Aでは税理士や取引先の銀行などの紹介が一般的でした。
M&Aマッチングサイトでは、インターネットで広く買い手を募集できるようになったことから、マッチングの成約率が上がりました。M&Aマッチングサイトの登場で、手間と費用の負担を軽減できるようになったことも小規模M&A増加の要因といえるでしょう。
個人の買い手の増加
個人が起業する場合は、基本的には1から起業するしかありませんでした。しかし、M&Aマッチングサイトの普及によって、M&Aによって会社を経営するという選択肢が加わりました。
個人にとっては、1から起業するのはリスクが高いことです。しかし、M&Aであれば、すでに稼働している会社や事業を引き継げるのでリスクを軽減できます。M&Aマッチングサイトの普及によって買い手が増加したことも、小規模M&A増加の要因といえます。
小規模M&Aの種類
小規模M&Aには以下のような種類があります。
- 株式譲渡する
- 事業譲渡する
それぞれどのような内容なのか、メリット・デメリットなどを詳しく説明していきます。
株式譲渡する
株式譲渡とは、会社が発行する株式を買い手が買い取って経営権を取得するという方法です。発行されている株式を100%買い取る必要はありません。
過半数(50%超)を取得すれば、株主総会決議において買主が単独で意思決定できるようになるため、通常は過半数の取得で十分です。
株式譲渡のメリットとデメリット
株式譲渡によるM&Aの場合、株主総会の承認や債権者・労働者保護の手続きなどが必要ありません。また、法手続きが簡単なので、時間と手間をかけずにM&Aが完了します。取得する株式を調整できる点もメリットといえるでしょう。
一方、株主が多数いる場合、小規模M&Aに必要な株式を十分取得できない可能性があり、交渉も複雑になる可能性があります。また、帳簿に記載されていない簿外負債を引き継ぐリスクがある点に注意してください。
事業譲渡する
事業譲渡とは、営利目的のために組織化されている会社の財産を買い手が取得するという方法です。買い手が取得するのは、ビジネスを行う上で必要な資産、負債、従業員、ノウハウなどです。
会社全体ではなく、会社の1つの部門だけを取得するのが特徴です。
事業譲渡のメリットとデメリット
買い手は事業に必要な資産だけを選択して取得できるため、不要な事業を取得せずに済みます。また、帳簿に記載されていない簿外負債を切り離せる点もメリットです。
一方、資産や契約を個別に移転しなくてはならないため、手間と時間がかかります。売り手は譲渡対象となる事業の貸借対照表や損益計算書といった財務資料を用意しなくてはならず、負荷が株式譲渡よりも大きい点がデメリットといえるでしょう。
小規模M&Aの流れ
小規模M&Aを利用する際は、以下の流れで進めます。
- 1.目標と戦略の設定
- 2.M&A業者、マッチングサイトの選定
- 3.M&A相手の選定
- 4.面談と条件交渉
- 5.基本合意書の締結
- 6.デューデリジェンスの実行
- 7.最終条件の交渉を進める
- 8.クロージング
それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。
目標と戦略の設定
M&Aの成約率を高めるには、まず目標と戦略を設定する必要があります。例えば、従業員の雇用を守るため、不要な事業を切り離すことで経営のスリム化を図るなどです。
目標や目的が曖昧だと、適切な戦略を練ることができません。最適な戦略を練るためにも、まずは目標や目的を明確にしましょう。
M&A業者、マッチングサイトの選定
経営や税金などの専門知識が不十分なまま、独断でM&Aを進めるのは危険です。小規模M&Aをトラブルなくスムーズに進めるには、M&Aの知識が豊富な専門家のサポートが欠かせません。
また、M&Aマッチングサイトを利用する際は、サイトによってサービス内容が異なるので注意してください。サイトによっては買い手を探すだけでなく、契約締結までをサポートしてくれる場合があるので自社に合ったM&Aマッチングサイトを選択しましょう。
M&A相手の選定
M&A業者やM&Aマッチングサイトを決めた後、M&A相手の選定に移ります。M&Aが成功するかどうかは良い相手先と出会えるかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
担当者と相談しながら候補企業を絞り、アプローチします。情報をどこまで公開するか難しいところですが、公開しすぎると会社を特定されてM&Aをしようとしていることが外部に漏れるので注意してください。
面談と条件交渉
良い相手先が見つかった場合、企業のトップ同士で面談をします。面談では、互いの価値観や将来の方向性、経営ビジョンなどについて話し合いますが、信頼できる相手先かどうかを判断する重要な機会なのでしっかり見極めましょう。
売り手と買い手の両方が面談後もM&Aを先に進めたいと考えている場合、次のステップに移ります。
基本合意書の締結
基本合意書とは、本契約を締結する前に交わされる仮契約のようなものです。基本合意書には、以下のような項目が記載されています。
- 契約条件
- 契約日
- 譲渡方法
- 譲渡価格
あくまでも上記は仮契約です。基本合意書の内容を踏まえながら買い手側は最終検討に入ります。
デューデリジェンスの実行
デューデリジェンスとは、M&Aの対象企業に対して買い手側が行う正確な調査のことです。公開された内容に誤りがないか、譲渡価格が適正かなどを調査します。
調査の結果、何らかの不備があった場合は合意条件が変更される、買い手側が不信感を抱いた場合はM&Aが破断する可能性があります。
最終条件の交渉を進める
デューデリジェンス後は、調査結果と基本合意の内容に基づきながら最終交渉を進めます。買い手側は調査の結果、基本合意の内容の変更が必要と判断した場合、譲渡価格の減額交渉となります。
交渉を繰り返す中で双方が条件に合意した場合は、いよいよ本契約の締結です。本契約は基本合意とは異なり法的拘束力が発生するので、不備がないかしっかり確認してから契約を締結しましょう。
クロージング
クロージングとは、小規模M&Aにおける最終段階のステップです。具体的には、本契約の内容に基づいて、必要な手続きや支払いなどを行って経営権を移すことです。
クロージングのステップでは、お金や株式などの資産だけではなく、人も動くため、トラブルを防ぐためにも事前にどのような流れでクロージングを進めるのかを計画書にまとめておきましょう。
小規模なM&A案件の探し方
M&Aを成功させるためには、自社の規模に合わせたM&A案件を探すことが不可欠です。小規模M&A案件の探し方として以下の2つが挙げられます。
- 仲介会社を通して探す
- マッチングサイトで探す
それぞれの探し方の内容とメリット・デメリットについて詳しく説明していきます。
仲介会社を通して探す
仲介会社とは、M&Aにおいて買い手側と売り手側の双方の間に立ってM&Aをサポートしてくれる会社です。
M&Aを専門とする企業なのでサポート体制が充実しているのが特徴です。
メリットとデメリット
仲介会社を通して探す場合には、M&A専門のアドバイザーが間に入ってくれて、万が一トラブルが発生してもサポートを受けられるので安心というメリットがあります。
一方で、M&Aの結果がM&A専門のアドバイザーの腕に左右されやすい、手数料が高めに設定されている点がデメリットといえます。実績や手数料などから総合的に判断する必要があるでしょう。
マッチングサイトで探す
M&Aのマッチングサイトとは、M&Aにおける売り手と買い手のマッチングが期待できるサイトです。
多くの人の目に触れることで、M&Aが速やかに成立する可能性が高い点が特徴です。
メリットとデメリット
M&Aマッチングサイトは、仲介会社を通して探すよりもコストを抑えられる点がメリットです。また、交渉を直接できる場合は、成約までにかかる時間を短縮できるでしょう。
ただし、M&Aマッチングサイトはサポートを十分受けられない可能性があります。サポートが不十分な場合、マッチングに時間がかかる、トラブルに発展する可能性があるなどのデメリットがあります。サポート体制がどうなっているかを確認してから利用しましょう。
小規模M&Aを成功させるポイント
小規模M&Aを成功させるには、以下のポイントを押さえながら進めることが重要です。
- 規模に見合った手数料の業者・サービスを利用する
- 企業価値を高めておく
- 許認可の取得
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
規模に見合った手数料の業者・サービスを利用する
M&A業者やM&Aマッチングサービスごとに、手数料やサービス内容が大きく異なります。内容を確認せずに契約した場合、多額の手数料を支払うことになったり、十分なサービスを受けられなかったりする可能性があります。
満足のいくM&Aを成立させるためにも、M&A業者やM&Aマッチングサービスの手数料やサービス内容などをしっかり確認してから契約しましょう。
企業価値を高めておく
売り手の中には、少しでも高く売却したいと考えている方も多いでしょう。好条件のM&Aを成立させるにはM&Aの前に企業価値を高めておくことが欠かせません。
しかし、すぐに企業価値が高まるものではないため、前もってM&Aに備えておくことが大切です。利益率を高める、無駄な経費支出を抑えるなどのように、業績が良く健全な経営ができている企業であると判断される状況を整えておきましょう。
許認可の取得
吸収合併の場合は存続会社の許認可によって事業を継続することが可能ですが、新設合併の場合は新設会社が別会社として扱われるため、許認可を取得しないと事業を行えません。
許認可を取得するまでは事業を行えず、取得するまでに時間がかかってしまうことを理解しておきましょう。
小規模M&Aを行う際の注意点
小規模M&Aを行う際の注意点として、以下の3つが挙げられます。
- 情報漏えいのリスク
- 財務的なリスク
- 従業員の離職
それぞれの注意点について詳しく解説していきます。
情報漏えいのリスク
M&Aを実施する際は、情報が漏れないように気をつけなくてはなりません。その理由は、M&Aをするという情報が漏れた場合には、従業員に知れ渡って退職者が増えたり、取引先が取引を停止したりするといった影響を受ける可能性があるためです。
情報漏えいを防ぐためにも、役員のように限られた従業員だけで情報を共有する、仲介会社や買い手とは秘密保持契約を締結するなどのように対策をしっかり練りましょう。
財務的なリスク
中小企業では、帳簿に記載しない簿外負債を抱えていることも少なくありません。簿外負債が原因でM&Aが不成立に終わる、M&A後の買い手とトラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。
例えば、将来支払う予定のある賞与引当金、退職給付引当金などは簿外負債となります。トラブルを防ぐには買い手に簿外負債についてもしっかり伝えておくことが重要といえるでしょう。
従業員の離職
M&Aによって従業員が大量に離職すると、買い手とトラブルになるほか、従業員の雇用を守れなくなります。トラブルを防ぐには、経営者が変わることによる従業員の離職の対策を練る必要があります。。
例えば、新しい会社の経営方針を従業員に周知させておく、待遇については現在と同等になるように買い手と交渉するなどです。M&Aを成功させるには、従業員と買い手の両方の協力が不可欠といえるでしょう。
不動産業界の小規模M&Aにご興味がある方へ
経営者の高齢化、後継者不足などによる小規模M&Aは増加傾向にあり、不動産業界も例外ではありません。そのため、不動産業で事業承継に悩んでいる方も多いでしょう。
不動産業界の小規模M&Aに関する最新情報を入手するには、セミナーに参加するのが効果的です。動かずに待っていても状況は変わらないため、まずはセミナーに参加してみてはいかがでしょうか。
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まとめ
経営者の高齢化、後継者不足が原因で、小規模M&Aが利用されるケースが増えました。小規模M&Aによって今まで手間がかかる、費用がかかるなどの点から選択しにくかったM&Aを手軽に行いやすくなりました。
また、小規模M&Aに対応したM&Aマッチングサイトの普及で、M&Aがさらに身近になったことで経営者が積極的にM&Aを検討することになったことも、小規模M&Aが増加する要因になったといえるでしょう。
しかし、M&Aをしやすくなったといっても、正しい知識を身につけないとトラブルに巻き込まれるので注意が必要です。M&A仲介会社に相談する、サポート体制が充実しているM&Aマッチングサイトを利用するなど、対策をしっかり講じましょう。