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不動産で開業するには?
事前に知っておきたい9つのこと
はじめに
不動産業の開業を検討している人の中には、どんな手続きが必要なのか、そもそも不動産業を開業することにメリットがあるのか気になっている人も多いのではないでしょうか?
開業前に必要な手続きを把握しておけば速やかに開業できる、メリット・デメリットを把握しておけば本当に開業すべきかどうかを見極められるため、開業の失敗を未然に防ぐことが可能です。
この記事では、不動産業の中でも、不動産売買の仲介業を開業する際の9つのステップと不動産業を開業するメリット・デメリットについて解説します。
不動産開業までの9つのステップ
不動産業を始めたいと思っても、不動産開業まではいくつかステップがあるため、すぐに開業できるわけではありません。
事前準備が疎かなまま開業しても、開業後の失敗するリスクが高まるだけなので、失敗を未然に防ぐためにも事前準備をしっかり行ってから開業することが重要です。
不動産開業までのステップは以下の9つです。
- 個人と法人経営業態を選ぶ
- 業種形態を選ぶ
- 開業資金を準備する
- 事務所を設置する
- 宅地建物取引士を設置する
- 会社を設立する
- 宅地建物取引業免許を申請する
- 保証協会・宅建協会に加入する
- 開業
それぞれのステップについて詳しく見ていきましょう。
1.個人と法人経営業態を選ぶ
不動産業を開業する際は、個人で開業するのか、法人で開業するのかをまずは決める必要があります。
どちらを選ぶかによって開業にかかる手間や資金、税率などが異なるため、開業してから後悔しないためにも双方のメリットとデメリットを正確に把握してから開業することが重要です。
個人経営で開業する場合のメリット・デメリット
個人経営で開業する場合、開業時に手間と経費がほとんどかかりません。税務署に開業する旨を届け出れば、手続きが完了します。
また、不動産業の売上から従業員に支払う給料や事務所費用などの諸経費を引いて残った売上は、全て自分の給料として取得することが可能です。
開業にかかる経費も法人より安いため、一見メリットが多い個人経営ですが、銀行融資を受けたいと思っても信用が大きくないため、十分な融資を受けられない可能性があります。
また、個人経営では、個人の財産も債務の対象に含まれるため、万が一倒産すれば全ての資産を失うことになります。売上が増えると、個人経営の方が法人経営よりも税率が高くなる点にも注意が必要です。
個人経営はスムーズに開業できますが、総合的なメリットを考えると法人経営の方が良いでしょう。
法人経営で開業する場合のメリット・デメリット
法人経営は個人経営よりも社会的な信用が高いという点が大きく異なります。そのため、銀行やリース会社と契約を交わす際に、個人経営より有利に働きます。
また、もし倒産しても個人の財産は債務の対象外なので、リスクを抑えることができます。法人経営は税率が一定なので、売上が増えるとともに税率が高くなる個人経営よりも税制面では法人経営が有利です。
しかし、開業時に登記申請手続きや認証手数料、従業員を雇用する場合は社会保険の加入など、個人経営より手間と費用が多くかかります。
開業の手間と費用を考えると個人経営を選びがちですが、長期的なメリットを考えると法人経営を選ぶことをおすすめします。
2.業種形態を選ぶ
不動産業は、「賃貸業」と「仲介業」に分類されます。さらに仲介業は、「賃貸仲介業」と「売買仲介業」に細分化されます。
仲介業を始めたいと考えている人は、賃貸仲介業と売買仲介業のどちらから始めるのか、業種形態を決めておく必要があります。
賃貸仲介業で開業
賃貸仲介業ではアパートやマンションといった居住用賃貸物件、事務所や店舗といったテナント用賃貸物件の情報を提供します。
賃貸仲介業の主な収入は、賃貸借契約が成立した場合に支払われる仲介手数料と管理委託を引き受けた場合に物件オーナーから支払われる管理委託費です。
売買仲介よりも1件あたりの仲介で得られる仲介手数料が少ないものの、売買よりも頻繁に取引があるため、収益が安定しやすいのが大きな特徴です。
売買仲介業で開業
賃貸仲介業は借りたい人が対象でしたが、売買仲介業では買いたい人を対象としているのが大きな違いです。売買仲介業では物件を購入したい人に情報を提供します。
売買仲介業の主な収入は、売買契約が成立した場合に支払われる仲介手数料です。
1件の取引金額が大きいため、1件あたりの仲介で得られる仲介手数料が大きいのが魅力ですが、頻繁に取引が行われるわけではないため、安定した収益の確保が難しいと言えます。
売買仲介業から始めても、収益が不安定になる可能性が高いため、まずは賃貸仲介業で土台を固めて、徐々に売買仲介業を手掛けていくことをおすすめします。
3.開業資金を準備する
独立開業に必要とされる開業資金は、人件費や供託所に納める営業保証金、事務所設立費用などを含めると、1,000~1,800万円程度です。
1,000万円以上の開業資金を自ら用意することは困難なので、開業資金をどのように工面するのかを考えておく必要があります。
開業にかかる資金については他の記事で紹介しています。
>>不動産開業にかかる資金とは?費用が一目でわかる早見表公開
4.事務所を設置する
不動産業を営むには、拠点となる事務所が必要です。事務所にはテナントを借りるという方法と自宅の一部を事務所に変更するという方法の大きく2つに分かれます。
自宅の一部を事務所にした場合は、月々のランニングコストを抑えることが可能ですが、信頼性はテナントを借りた方が高いと言えます。
そのため、資金調達が可能であれば最初からテナントを借りた方が良いですが、資金面に余裕がない場合は、まずは自宅で開業して後からテナントを借りるのも選択肢の1つです。
5.宅地建物取引士を設置する
事務所を設置する際は、事務所ごとに一定数以上の専任の宅地建物取引士を設置しなければなりません。宅地建物取引士とは、不動産に関連する国家資格の1つで合格率は15%程度です。
オーナー自らが取得しなくても宅地建物取引士を有する従業員を雇用すれば不動産開業が可能です。しかし、業務に必要な知識が全く身につかないため、経営が他力本願になってしまいます。
また、宅地建物取引士を有する従業員が退職した場合、新たに従業員を確保しなければならず、事業の継続が困難になる可能性もあります。
宅地建物取引士の有無に左右される不安定な経営状況ではなく、安定した経営を継続するためにも、オーナー自らが宅地建物取引士を取得した方が良いでしょう。
6.会社を設立する
個人経営であれば会社を設立する必要はありませんが、後々有利に経営に取り組みたい人には会社を設立する法人経営の方が良いと言えます。
法人経営を始めるには、まず法人としての資格を取得するために必要な法人登記を行わなくてはなりません。法人登記には、最低でも1週間はかかるため、逆算して計画を立てる必要があります。
また、会社設立後に不動産業の免許を取得することから、不動産業を始めるには2ヶ月程度みておく必要があります。
法人登記や免許の取得に時間がかかった場合、その間は収入がなくてもテナント料は支払う必要があるため、費用負担が重くのしかかります。スムーズに手続きを進められるように事前に準備しておきましょう。
7.宅地建物取引業免許を申請する
宅地建物取引士という資格があれば、すぐ不動産開業できるわけではありません。不動産開業するためには、宅地建物取引業の免許を取得する必要があります。
事務所が1つしかない場合は事務所の所在地の都道府県知事に申請します。複数の事務所を有している場合は国土交通大臣です。
免許申請時に専任の宅地建物取引士が誰なのかを伝えなくてはならないため、免許申請までに専任の宅地建物取引士を確保しておく必要があります。
業界経験者で宅地建物取引士を取得している場合は、以前の勤務先で専任登録されているケースがあるため、退職時に専任解除の手続きを済ませておきましょう。
8.保証協会・宅建協会に加入する
宅地建物取引業免許を取得した後は、保証協会・宅建協会に加入します。
それぞれの協会の違いを詳しく見ていきましょう。
保証協会
不動産開業する際は営業保証金を納めなくてはなりません。営業保証金は本店で1,000万円、複数の事務所を有する場合は1店舗ごとに500万円と高額です。
しかし、保証協会に入会した場合、本店で60万円、他の事務所は1店舗ごとに30万円と大幅に営業保証金の負担を抑えられます。
営業保証金は万が一トラブルがあった時に備える費用ですが、1,000万円は簡単に払える金額ではありません。そのため、保証協会に加入して費用負担を抑えるのが一般的です。
宅建協会
宅建協会の加入は必須ではありません。しかし、宅建協会に加入しなければ全国の物件情報が掲載されているレインズを利用できないため、営業上かなり不利になります。
宅建協会に加入すればレインズを利用できるため、他の不動産会社と同条件で経営できます。その結果、有利に営業を進めることが可能です。
宅建協会の加入に必要な費用や手続きは各協会で異なるため、いくらかかるのかを事前に確認しておくことをおすすめします。
9.開業
上記8つのステップに不備があると、開業までに時間がかかる、無駄な費用がかかるため、ステップを事前に把握してから各ステップに臨むことが重要です。
不動産開業にはある程度の費用がかかるため、資金もしっかり確保しておきましょう。
不動産開業するメリット
世の中には様々な業種がありますが、不動産業で開業するメリットは何が挙げられるのでしょうか?
不動産開業するメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 他業界よりも比較的開業しやすい
- 自由度の高い営業ができる
- 高収入が期待できる
- 手数料を自分で決められる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
他業界より比較的開業しやすい
仕入れや在庫の管理が必要な業界では、独立・新規参入がなかなか容易ではありません。しかし、不動産業はそのような業務を行わないため、独立・新規参入しやすいと言えます。
仕入れ・在庫を抱える業界の場合は、初期費用が大きくなる、不良在庫を抱えるリスクと隣り合わせですが、初期費用を抑えられる、不良在庫の心配をせずに済むのは安心できるポイントです。
自由度の高い営業ができる
会社に所属している場合、会社という組織の一員であることを考慮しなくてはならないため、営業行為に一部制限が生じます。しかし、自ら会社を設立した場合、自由度の高い営業を行えるようになります。
全ての行動の責任を1点に引き受けることになりますが、自分の思い通りに取り組めるのは大きなメリットと言えるでしょう。
高収入が期待できる
会社員だと、契約を取ったことで収入がアップする可能性はありますが、そこまで大きな変化は望めません。しかし、会社を設立すれば契約を取った分だけ収入を増やすことが可能です。
収入のアップはモチベーションのアップにつながるため、良い流れに乗ることができれば高収入が期待できるでしょう。
手数料を自分で決められる
売買の仲介で契約を成立させれば、依頼者から仲介手数料を支払ってもらえます。手数料の上限は売買契約の取引額によって以下のように異なりますが、範囲内であれば自分で自由に設定できます。
不動産売買の取引額 | 仲介手数料の上限(税抜) |
---|---|
200万円以下 | 5%以内 |
200万円超400万円以下 | 4%以内 |
400万円超 | 3%以内 |
上記は買主・売主の一方から受け取れる上限なので、両方を仲介できればより多くの手数料が得られます。
不動産開業するデメリット
一方、不動産開業には、以下のようなデメリットも伴います。
- 収入が安定しないリスクがある
- 借金のリスクがある
- 業務が大変になりがちになる
- 実績面で不利になることがある
それぞれのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
収入が安定しないリスクがある
会社員の場合、契約の有無に関係なく毎月給料を受け取れます。しかし、不動産開業すると、契約がなければ収入を得られません。
1回の契約によって得られる収入が大きくても、毎月必ず得られるとは限らないのが大きなデメリットと言えるでしょう。
借金のリスクがある
会社員として不動産業に携わる場合、もし不動産会社が倒産しても給料を受け取れなくなるだけで済みます。しかし、不動産開業した場合、倒産すると借金が残る可能性もあります。
失敗した場合の影響が大きいので、最悪の事態を想定しておく必要があるでしょう。
業務が大変になりがちになる
会社員の場合、自分の担当業務のみをこなせば問題ありませんが、不動産開業した場合、全ての業務を自分で行わなくてはなりません。
従業員を増やして負担を軽減することも可能ですが、従業員の雇用で補い切れない業務もあるため、精神的・肉体的な負担が大きくなるという点にも注意が必要です。
実績面で不利になることがある
レインズを利用すれば全国の物件情報を簡単に入手できますが、100%情報が入手できるわけではありません。そのため、独自の情報入手ルートをもった実績の豊富な不動産会社の方が選ばれやすい傾向があります。
新規開業した場合、実績という点では他の不動産会社と比較するとかなり不利です。軌道に乗るまでにかなり時間を要する可能性があるということを覚えておきましょう。
不動産フランチャイズ加盟で開業
不動産開業してすぐに軌道に乗せて安定した収益を得ることは容易ではありません。そこでおすすめするのが不動産フランチャイズ加盟で開業するという方法です。
不動産フランチャイズ加盟で開業すれば本部のネームバリューを活かしながら顧客を確保できるため、軌道に乗せやすいと言えます。
また、本部が提供する経営に必要なツールや様々なサービス・支援制度を利用できるため、不動産開業で失敗するリスクを軽減できます。
不動産フランチャイズの詳しいメリットについては、こちらの記事で書いています。
>>不動産フランチャイズのメリット・デメリットをご紹介!
まとめ
不動産開業はすぐ始められるものではありません。そのため、速やかに開業するためにも、事前にどのような手続きが必要なのか把握しておくことが重要です。
また、不動産開業はある程度の資金を必要とするため、後悔しないためにも本当に不動産開業をすべきなのかメリットとデメリットも再確認しておく必要があります。
この記事には、不動産開業を始める際の9つのステップとメリット・デメリットをまとめているので、事前に内容をよく確認してから不動産開業に臨みましょう。