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空き家に共有名義。増える不動産の相続
トラブルとその回避法を解説します
はじめに
街の不動産業者の中には、共有名義になっている空き家の相談を受けている会社もいることでしょう。空き家が共有名義になっている場合、相続トラブルが発生しやすく、解決が困難なケースも多いので注意が必要です。
この記事では、増える不動産の相続トラブルについて、どんなトラブルが発生しやすいのか、回避策について解説します。不動産の相続トラブルに関して相談を受けている不動産業者の方は、ぜひご参照ください。
増える不動産の相続トラブル
団塊の世代という言葉を聞いたことがある方も多いでしょう。団塊の世代とは、第一次ベビーブームの際に生まれた世代のことです。この世代が後期高齢者に該当することになったことで、近年、親世代の高齢化に伴い、不動産を相続する子世代が増えました。その結果、遺産分割を巡り、裁判に発展するケースも増加しました。
相続税の基礎控除額改正でトラブルが増加?
不動産の相続トラブルが増加したのは、団塊世代の高齢化だけが原因ではありません。不動産の相続トラブル増加の要因として、基礎控除額の改正も挙げられます。
相続税の基礎控除額は、2015年1月1日に縮小され、改正前と改正後の基礎控除額は以下のように変わりました。
【改正前】5,000万円+1,000万円×法定相続人の数
【改正後】3,000万円+600万円×法定相続人の数
法定相続人が配偶者、子ども2人の3人の場合、改正前の基礎控除額は8,000万円、改正後は4,800万円です。改正によって基礎控除額が40%減となったことによって、相続税の課税対象となるケースが増え、相続税の課税額が増えたことも、遺産分割でトラブルが増加した要因といえます。
よくあるトラブル1 相続した不動産を空き家として放置
不動産の相続が発生したものの、相続人がすでにマイホームを取得していたり、遠方に住んでいたりして戻れないといったケースも珍しくありません。また、思い入れがあってなかなか売却に踏み切れないというケースもあります。そのようなケースでは、不動産が空き家として放置されることになります。
空き家として放置される期間が短い場合は問題ありませんが、期間が中長期に渡る場合は、トラブルに発展するケースが多いので注意してください。
増える空き家問題
相続した不動産は、空き家かどうかに関係なく固定資産税や都市計画税などを支払わなくてはならず、劣化を防ぐための修繕を行わなくてはなりません。また、適切な管理を怠ると、経年劣化の進行や不法投棄、不審者の侵入などによって近隣住民に迷惑がかかる可能性があります。
自治体から適切に管理されていない空き家という理由で特定空き家に指定されると、固定資産税の優遇措置が受けられなくなるため、税負担が大きくなるので注意しましょう。
事前回避するためには
上記のトラブルを回避する方法として、以下のような回避策が挙げられます。
- 売却する
- 貸し出す
- 管理を委託する
管理を委託すると、委託費が発生します。将来的に住む予定がある場合には管理を委託しても問題ありませんが、予定がないのであれば、売却または貸し出すことをおすすめします。
空き家に関してはこちらの記事でも詳しく解説しています
>>空き家相続のポイント!放置するデメリットや相続税の節税について
よくあるトラブル2 誰が不動産を相続するか揉める
相続人が複数人いる場合は、誰が不動産を相続するかで揉める可能性があります。特に、相続人が実家暮らしのケースでは、自分が相続すると主張して揉めて話し合いが進まないということも珍しくありません。
他にも、相続財産に占める不動産の資産価値の割合が高い場合は、平等な遺産分割を行いにくく、トラブルに発展する可能性があるので注意してください。
最も効力を持つのは遺言書
遺産を分割する際には、相続人全員で遺産分割の方法について話し合う遺産分割協議を行われます。しかし、各相続人が自分の意見を主張するような遺産分割協議では、建設的な話し合いができません。
そこで重要なのが、有効な遺言書の有無です。被相続人が遺言書を作成していた場合には、原則遺言書の内容に従って遺産分割を行うことになります。
事前回避するためには
先述のようなトラブルは、相続が発生してからではなかなか解決できません。事前に回避するためには、相続発生前に遺産分割について話し合っておくことが大切です。
例えば、同居する相続人がいるケースでは、同居する相続人が不動産を取得して、残りの相続人はそれ以外の遺産を相続するといった方法や、不動産が資産の大半を占めるようなケースでは、相続後に現金化してから分割するといった方法などです。
話し合った内容に基づいて遺言書を作成していれば、相続発生後のトラブルを回避できるでしょう。
空き家に関してはこちらの記事でも詳しく解説しています
>>マンション相続の4つの方法。必要な費用や税金の事についても解説します
よくあるトラブル3 相続した不動産を平等に分けようとして揉める
「よくあるトラブル2」でも触れた通り、相続財産に占める不動産の資産価値の割合が高いケースでは、平等な遺産分割を行いにくく、トラブルに発展することも珍しくありません。
平等な遺産分割を行うには、どのような分割方法があり、それぞれどのような特徴があるのか事前に把握した上で、遺産分割を行うことが大切です。
相続不動産の分割について
不動産を平等に分割する方法としては、以下の4つが挙げられます。
- 現物分割:不動産をそのまま分ける
- 換価分割:不動産を現金化してから分ける
- 代償分割:不動産を相続した相続人が、差額分を他の相続人に支払う
- 共有分割:相続人全員で共有する
現物分割は、不動産や現金などの遺産を相続割合に応じてそのまま分ける方法です。各資産が均等にある場合は分けやすいですが、いずれかに偏っている場合には、選択できません。
換価分割は不動産を分割しやすい現金に換えるため、公平に分けやすい分割方法といえます。
代償分割は不動産の相続が公平に行われていない場合、不動産を相続した相続人がその差額分を他の相続人に補填します。公平性は高いですが、不動産を相続した相続人に資力が十分ないと選択できません。
共有分割は全員で共有するので公平性は高いですが、将来トラブルに発展する可能性が高いので注意が必要です。
事前回避するためには
上記のように、分割方法は全部で4つあります。この中で最もトラブルが少ないのは、現金化することで平等に分割できる換価分割です。
以降で説明する「よくあるトラブル5」で触れますが、共有名義はトラブルに発展しやすいです。余程の理由がない限りは、共有名義を選択しないようにしましょう。
よくあるトラブル4 相続した不動産の名義変更がされていない
不動産を相続する際は、不動産の所有者が変わったことを周囲に知らせるために、名義変更手続きを行います。しかし、代々住み継いできた家などの場合は、名義が祖父のままになっており、名義変更されていないというケースも少なくありません。
名義変更していないと、不動産の所有者が誰なのか正確に把握できなくなることに加え、相続人同士で揉める原因になるので注意してください。
法定相続人が多いと揉める
法定相続人とは、民法で定められている被相続人の財産を相続できる人物です。被相続人が遺言書で相続人を指定しているケースを除き、基本的には法定相続人同士で遺産分割について話し合います。
祖父から親の兄弟姉妹、親の兄弟姉妹からその法定相続人へと相続が続いた場合に、不動産の名義を祖父から変更していないと、不動産の所有権が誰にあるのか判断できません。
相続人の整理や事務処理は個人で行うことは容易ではなく、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することが多いため、時間や費用が必要であることを覚えておきましょう。
事前回避するためには
相続による不動産の名義変更は、祖父から親、親から子と相続が続くほど困難になります。そのため、少しでも早く名義変更が正しく行われているか確認することが大切です。
不動産の名義変更が行われているか不安な方は、親が健在のうちに、不動産の名義を確認しておきましょう。
よくあるトラブル5 共有名義の不動産を相続し揉める
共有分割は、不動産を相続人全員で共有するという方法です。そのため、誰が不動産を相続するかで揉めている場合に、一時的に全員の共有名義とするのは有用です。
しかし、共有名義のまま放置していると、共有名義人にさらに相続が発生した場合に、共有名義者がどんどん増えて、不動産について意思決定を行いにくくなる点に注意が必要です。
共有名義者とうまく連絡が取れない
単独名義の場合、不動産を売却する、賃貸するなどを名義人が自由に行うことが可能です。しかし、共有名義の場合、共有者の合意が必要になります。
近年は、親族の付き合いが希薄化しており、共有者と連絡が取りにくいというケースも少なくありません。また、共有者が亡くなって、その子どもや配偶者が相続した場合、誰が共有者なのか把握しにくくなります。その結果、合意を得にくい、合意を得るまでに時間がかかることも増えています。
固定資産税や管理費は誰が負担するか
共有名義の不動産を誰も使用していない場合、空き家として放置されることも少なくありません。放置された空き家は、経年劣化が進行するため、劣化を防ぐための維持や管理が必要です。また、空き家であっても毎年固定資産税や都市計画税が発生します。
共有名義の不動産は、誰が管理するのか、修繕費や固定資産税などは誰が負担するのかで揉めやすいという点にも注意しなくてはなりません。
事前回避するためには
不動産が共有名義の場合や相続人が複数人いて不動産の相続で共有分割が選択される可能性が高いケースでは、生前対策が欠かせません。
すでに共有名義の場合は相続発生後の共有状況がさらに複雑になることを回避するためにも、生前に単独名義に変更することをおすすめします。
しかし、共有名義を単独名義に切り替えることは、容易ではありません。共有者に対して相応の金銭の支払いが必要になることが多いため、共有名義の不動産の相続は、やや煩わしいということを理解しておきましょう。
様々な不動産の相続トラブルを回避するために知っておくべきこと
相続トラブルは、相続税がいくらからかかるのか、相続時の遺産分割における法定相続分がどのくらいなのかがわからないことが原因で発生しやすいです。
そのため、不動産の相続トラブルを回避するには、事前にこれらの理解を深めておくことが大切です。
相続税がかかるかどうか
相続財産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の範囲内に収まっている場合には、基本的に相続税が課されることはありません。
預貯金、不動産、株式などのすべての財産の合計額が基礎控除額の範囲内なのか、基礎控除額を上回っているか事前に確認しておけば、相続時のトラブルを回避できるでしょう。
法定相続分を理解しておく
法定相続分とは、民法に定められている相続割合のことです。法定相続分は、法定相続人の組み合わせによって以下のように異なるので覚えておきましょう。
- 配偶者と子ども:配偶者2分の1、子ども(2人以上の場合は全員で)2分の1
- 配偶者と直系尊属(父や母など):配偶者3分の2、直系尊属(2人以上の場合は全員で)3分の1
- 配偶者と兄弟姉妹:配偶者4分の3、兄弟姉妹(2人以上の場合は全員で)4分の1
法定相続人が何人いるか
法定相続人は、以下のように相続順位が決まっています。
- 第一順位:子(子が亡くなっている場合は孫)
- 第二順位:直系尊属(父母、父母が亡くなっている場合は祖父母)
- 第三順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪)
配偶者は常に相続人になります。上位の順位者がいない場合や上位の順位者が相続を放棄した場合にのみ、次の順位者に権利が移行し、同じ順位者が複数人いる場合は人数で分けます。
遺言書の作成
相続が発生した際、遺言書が作成されていない場合は、法定相続人同士で遺産分割について話し合う遺産分割協議を行います。しかし、法定相続人同士で主張がぶつかり、話し合いが円滑に進まないことも多いです。
そこで重要なのが、生前に遺言書を作成しておくということです。相続方法について生前に話し合うだけでは、強制力がありません。確実に相続人同士の相続トラブルを回避するためにも、話し合いに加え、遺言書の作成を忘れないようにしましょう。
不動産相続のトラブル回避は家族の話し合いから
相続が発生してからでは、手続きや法事などで忙しくなるため、不動産の相続についての話し合いがきちんと行われず、空き家のまま放置されることも少なくありません。
将来的に不動産を相続する可能性がある場合には、不動産の相続トラブルを回避するためにも、なるべく親が生きているうちに親と兄弟で不動産の相続方法について話し合っておきましょう。
今後の不動産市場を左右するのは「相続」
少子高齢化によって、不動産の相続トラブルは今後も確実に増え続けます。相続財産は、2030年に1,000兆円に達するといわれており、そのうち41.9%は不動産で占められます。
不動産仲介業者が不動産の相続と関わる機会が増えるため、不動産の相続に関する知識を蓄えておき、相続の相談先として関わっていくことが重要です。
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まとめ
少子高齢化により、不動産の相続トラブルが増加しています。不動産の専門家である不動産会社も何らかの形で不動産相続に関わることが増えており、収益拡大のためにも新たなビジネスモデルとして取り入れられるかが重要です。
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